読書: Rani Manicka 著 "The Rice Mother"
セイロンの村で元気いっぱいに育った少女は、14歳で騙されて既婚の中年男に嫁ぎマラヤに渡る。彼女は逞しく生き抜き、やがて長男の嫁に「蜘蛛」と呼ばれる姑へと成長する...マラヤからマレーシアへ、あるインド系家族4代の構成員のそれぞれの独白を通して、家族とは何かを問う感動の長編!
南国でまったり異文化に対する調和とかなんとか建前を並べる小説、では決してない。登場人物たちは友情を結びつつ、ときには偏見や嫌悪感すら露わにする。家族の中にも愛情とともに残酷な殺伐さを描きまくる。
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マレーシアの小説には、戦争絡みで「日本」がよく登場する。この小説も例外ではなく、主人公たちの家族は第2次対戦の日本占領時代を経験する。そしてその受難ゆえ登場人物たちは日本人に対する憎悪で満ちている。いっぺんの妥協もない憎しみ。日本の小説でマレーシアが描かれることはあまりなく、マレーシアにインド人がいることすら知らない日本人が多いであろうギャップにたじろぐ。マレーシアのインド人は日本占領時代を好意的に受け止めているという情報もあるが、どうなのだろう?人によるのではないか?
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邦訳も出版されているようだが、英語の原著で読んだ。さほど難しいわけではないが、長いので時間がかかる。ネットの古本屋で800円位だったが、ずいぶん長い時間充実した読書をできたので非常に得をした気分である。